弁護士法人 本江法律事務所

弁護士法人 本江法律事務所
ホーム企業案件人事・労務 › 【労働問題】管理監督者の割増賃金(その2)

企業案件

COMPANY WORKS
人事・労務

【労働問題】管理監督者の割増賃金(その2)

前回のコラムでは「管理監督者」に該当するか否かの判断要素についてお話させていただきました。

簡単に振り返りますと…

すなわち、「管理監督者」であるかは名称に左右されず判断され、

①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること

②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること

③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること

(以上、菅野和夫「労働法(第十一版補正版)」474頁)

各要素が認められた場合「管理監督者」に該当します。

 

今回は、以上の判断要素の観点から、どのような具体的な事実がどのような評価を受けているかについて具体例を挙げていきます。

 

【判断要素①について】

 ①の労務管理に関する指揮監督権限を認められていたかに関連して、人事に関する決定権限の有無・程度が問題となります。

まず、一般的には、人事に関するある事項について最終決定権限がある場合には、労務管理に関する指揮監督権限があったと判断されやすくなるということができるでしょう

 

しかし、人事に関連するどのような事項について最終決定権限があったのかについて、細かく検討がされるべきです

裁判でも事例によって下記のように判断が分れています。

 

例えば、ファーストフード店の店長について、

アルバイト従業員の採用については権限があるが、何人でも自由に採用できるわけではなく、その時給を自由にすることもできなかったこと、及び正社員の採用権限はなく、第1次評価者として人事考課を行うにすぎなかったことが、①について消極的に評価されています(日本マクドナルド事件・東京地判平成20年1月28日判タ1262号221頁)。

 

他方一方で、①に関して、別の裁判例では「必ずしも最終決定権限は必要ではない」とも述べられています。

同裁判例は、スポーツクラブのエリアディレクター(統括者)について、新卒の採用についての決定権限を全く持たなかったものの、その他の従業員に関しては、起案や推薦を行うことによって人事に関与しており、エリアの統括に必要な人材の登用について一定程度の裁量を有していたことが①について積極的に評価されています(セントラルスポーツ事件・京都地判平成24年4月27日労働判例1058号69)。

 

以上のことからすると、人事に関する最終決定権限があること①の要素を肯定する要素となりますが、対象者に最終決定権限がない場合であっても、人事に対する裁量の度合いが強い事情があれば管理監督者」であると判断されやすくなるでしょう

 

【判断要素②について】

②の労働時間についての裁量権の有無に関連しては、下記のような裁判例があります。

「企業の支社長について、支社長がパソコンの勤務管理シートに出退勤の時刻を入力するシステムがとられていたという事情」について判例は、同支社長は、早い時刻から遅い時刻まで、営業に関する報告をするよう社長から電話等で連絡を受けることがあったこと、外出する場合にはホワイトボード等にその旨を記載していたこと、などの事実より、同支社長に出退勤について十分な裁量があったとは認められないとして②について消極的に評価されています(ゲートウェイ21事件・東京地判平成20年9月30日労働判例977号74頁)。

一方、前掲セントラルスポーツ事件では、エリアディレクターについて、遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことがなかったこと、同人が業務時間内に整骨院に合計86回、20分から1時間程度整骨院でマッサージを受けていたことから業務時間に拘束されていたとは認められないとして②について積極的な評価がされています。

 

【判断要素③について】

③の一般の従業員に比べその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることに関連して、下記のような裁判例があります。

前掲日本マクドナルド事件において、「管理監督者として扱われていた店長が、時間外割増賃金の支払われるファーストアシスタントマネージャーよりも年収が少なくなっていたという事実」が③について消極的に評価されています。

また、前掲ゲートウェイ21事件では、お客様評価給を含めた支社長への月ごとの給与総支給額は、27万円前後から100万円と変動が大きいものであったところ、基本給が21万円前後でさほど多額ではなく、また、お客様評価給は成績見合いの歩合給としての性質をもつものであるから、時間外手当見合いのものといえないとしてこちらも消極的な評価がされました。

 

いかがでしょうか。

以上挙げたところだけでも、裁判例では「管理監督者」であるかどうかについて、様々な事実が詳細に評価され判断されているということがわかります。

つまり管理監督者であるかどうかの判断は個別具体的にしなければならず、また判断は非常に難しいと言えるでしょう。

特定の人が「管理監督者」に該当するかどうかについて、お悩みをお持ちでしたら、お気軽に弊所までご相談ください。

人事・労務

【労働問題】管理監督者の割増賃金(その2)

前回のコラムでは「管理監督者」に該当するか否かの判断要素についてお話させていただきました。

簡単に振り返りますと…

すなわち、「管理監督者」であるかは名称に左右されず判断され、

①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること

②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること

③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること

(以上、菅野和夫「労働法(第十一版補正版)」474頁)

各要素が認められた場合「管理監督者」に該当します。

 

今回は、以上の判断要素の観点から、どのような具体的な事実がどのような評価を受けているかについて具体例を挙げていきます。

 

【判断要素①について】

 ①の労務管理に関する指揮監督権限を認められていたかに関連して、人事に関する決定権限の有無・程度が問題となります。

まず、一般的には、人事に関するある事項について最終決定権限がある場合には、労務管理に関する指揮監督権限があったと判断されやすくなるということができるでしょう

 

しかし、人事に関連するどのような事項について最終決定権限があったのかについて、細かく検討がされるべきです

裁判でも事例によって下記のように判断が分れています。

 

例えば、ファーストフード店の店長について、

アルバイト従業員の採用については権限があるが、何人でも自由に採用できるわけではなく、その時給を自由にすることもできなかったこと、及び正社員の採用権限はなく、第1次評価者として人事考課を行うにすぎなかったことが、①について消極的に評価されています(日本マクドナルド事件・東京地判平成20年1月28日判タ1262号221頁)。

 

他方一方で、①に関して、別の裁判例では「必ずしも最終決定権限は必要ではない」とも述べられています。

同裁判例は、スポーツクラブのエリアディレクター(統括者)について、新卒の採用についての決定権限を全く持たなかったものの、その他の従業員に関しては、起案や推薦を行うことによって人事に関与しており、エリアの統括に必要な人材の登用について一定程度の裁量を有していたことが①について積極的に評価されています(セントラルスポーツ事件・京都地判平成24年4月27日労働判例1058号69)。

 

以上のことからすると、人事に関する最終決定権限があること①の要素を肯定する要素となりますが、対象者に最終決定権限がない場合であっても、人事に対する裁量の度合いが強い事情があれば管理監督者」であると判断されやすくなるでしょう

 

【判断要素②について】

②の労働時間についての裁量権の有無に関連しては、下記のような裁判例があります。

「企業の支社長について、支社長がパソコンの勤務管理シートに出退勤の時刻を入力するシステムがとられていたという事情」について判例は、同支社長は、早い時刻から遅い時刻まで、営業に関する報告をするよう社長から電話等で連絡を受けることがあったこと、外出する場合にはホワイトボード等にその旨を記載していたこと、などの事実より、同支社長に出退勤について十分な裁量があったとは認められないとして②について消極的に評価されています(ゲートウェイ21事件・東京地判平成20年9月30日労働判例977号74頁)。

一方、前掲セントラルスポーツ事件では、エリアディレクターについて、遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことがなかったこと、同人が業務時間内に整骨院に合計86回、20分から1時間程度整骨院でマッサージを受けていたことから業務時間に拘束されていたとは認められないとして②について積極的な評価がされています。

 

【判断要素③について】

③の一般の従業員に比べその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることに関連して、下記のような裁判例があります。

前掲日本マクドナルド事件において、「管理監督者として扱われていた店長が、時間外割増賃金の支払われるファーストアシスタントマネージャーよりも年収が少なくなっていたという事実」が③について消極的に評価されています。

また、前掲ゲートウェイ21事件では、お客様評価給を含めた支社長への月ごとの給与総支給額は、27万円前後から100万円と変動が大きいものであったところ、基本給が21万円前後でさほど多額ではなく、また、お客様評価給は成績見合いの歩合給としての性質をもつものであるから、時間外手当見合いのものといえないとしてこちらも消極的な評価がされました。

 

いかがでしょうか。

以上挙げたところだけでも、裁判例では「管理監督者」であるかどうかについて、様々な事実が詳細に評価され判断されているということがわかります。

つまり管理監督者であるかどうかの判断は個別具体的にしなければならず、また判断は非常に難しいと言えるでしょう。

特定の人が「管理監督者」に該当するかどうかについて、お悩みをお持ちでしたら、お気軽に弊所までご相談ください。

企業案件一覧