企業のコンプライアンスを具体的に解説!

1 コンプライアンスとは何か

ここ数年で、日本は急速にコンプライアンス重視の社会に変貌し、昨日まで権勢を誇ったメディアや大手企業、引っ張りだこの著名人も、コンプライアンス違反で立ちどころに失墜してしまう時代になりました。これは地域社会の中小企業や個人においても無縁の話ではなく、コンプライアンスについて漠然とした理解のままでは、いつ足元をすくわれるか分かりません。

しかし、エネルギーに満ち溢れた企業経営者の中には、立ち止まって「コンプライアンスとはそもそも何なのか」を考えたことがない方が多いのも事実。私ども弁護士が企業法務に携わる場合に最も苦慮する場面として、企業経営者自身にコンプライアンスの感覚が身についていない、関心がない、といったケースがあります。

そこで、企業経営者が最低限、身に着けておくべきコンプライアンスに関する理解とはどういったレベルのものか、以下、解説をいたします。

2 広義のコンプライアンスが求められる

コンプライアンスの語源である「complere」は、「要求を共に満たす」とか「神の遺志に従う」といった意味で使われていました。そこから派生した「comply」という動詞にも「要求を充足する」という意味があり、「法令順守」という訳語は、定義として狭すぎるきらいがあります。

昨今、企業倫理として、企業は人権や環境等にも配慮することが求められるようになりました。これも企業におけるコンプライアンス上の課題として求められる価値として共通点があります。
法令や行政上のガイドライン、社内規程・マニュアルといった、明文化されたルールだけではなく、今や目に見えない社会的な要請を満たすことが求められる時代となっており、その要請は流動的で、一義的な理解は困難です。とはいえ、企業倫理という概念においては一定の方向性や考え方の潮流があり、企業経営者が自身の感覚とのすり合わせを行っていく必要があります。

2025年に世間を大きくにぎわせたフジホールディングスの事案では、特に「時代の要請」と「経営層」との間で考え方の乖離が露呈したことで、スポンサー離れが加速しました。経営陣が「従業員よりも取引先との関係を優先」し、そのことを問題視する風潮がなかったことや、問題が明るみになった後においても、そのことに触れずに釈明を続けたことにより、ガバナンス不全の問題が浮き彫りになりました。
企業倫理として、シンプルに『取引先の利益よりも、まず従業員の利益を保護するべき』という考え方を持つべきだったということではないかと思います。

3 中小企業でも無縁ではない

中小企業にとっても、コンプライアンス違反が与える衝撃は日に日に重みを増しています。たとえば、取り扱う製品等の安心・安全の確保、製品検査等の不正防止、粉飾決算・租税回避など会計に関わる不正、助成金の不正受給の問題、セクハラやパワハラをはじめとする各種ハラスメント、長時間労働、未払残業問題、従業員による横領など不正行為、個人情報の管理といったコンプライアンス上の管理が必要となる範囲は拡大し続けており、これらを無視した経営は、最終的に大きな損失をもたらす可能性があります。

確かに、人的なリソースに乏しい中小企業に、大手企業と同等のコンプライアンス遵守を求めるのは酷ではあります。
ただ、意識しているかどうかの問題は、顧客との関係維持のため、従業員の採用や長期雇用のためにも、非常に重要なことです。

4 コンプライアンス違反のリスク

コンプライアンス違反に対しては、法的な賠償リスクや、許認可等が取り消されるリスク、取引先等の信頼を失い、失注するリスクなど、事業に対しては大きな支障を生じる可能性があります。
それだけでなく、今や企業不祥事の情報は完全にコントロールすることができるものではなく、当該コンプライアンス違反の程度に相応しくない程の社会的な制裁を受ける可能性が否定できない時代となっています。
SNSやメディアでの拡散により、過剰に叩かれる可能性があり、誹謗中傷によって大きな損害を被るおそれがあります。最悪の場合、倒産に至るおそれもあり、不祥事が発覚してから対応しても間に合わない、と言う場合も考えられます。

そのような事態を避けるため、経営者の責任として、社内にコンプライアンス体制を確立し、運用し、改善を重ねる必要があります。
コンプライアンス違反の行為を防止し、違反の早期発見を可能とし、違反に対する対応を誤らないようにするためには、経営トップが意識的にコンプライアンス体制と向き合うことが必要です。

5 コンプライアンス体制構築のメリット

コンプライアンス体制を構築することに対して、経営者の中には、リスク回避の側面ばかりに気を取られ、「これまで大きな法的問題もなく経営して来られたのだから、うちには必要ない」という考えに至っている人もいます。

しかし、これは大きな間違いだと言っていいと思います。コンプライアンスの意識のない企業(これは業界の中で噂にもなりますし、採用面接のあり方にも表れるかもしれません。)が優秀な人材から回避される傾向は年々強くなっており、コンプライアンス体制が構築されていない企業は、次第に競争力を失っていくことが見込まれます。

コンプライアンスは今や継続企業にとって不可欠のものであり、一定規模になればコストを払うことも躊躇すべきでない、ということについて、経営者は意識改革を迫られています。

6 コンプライアンス体制の構築手順

 具体的なコンプライアンス体制の構築における手順を説明します。

 まず、①経営者がコンプライアンス体制を構築するという方針を決定し、これを社内に周知します。具体的には、「企業倫理綱領」や「行動規範」など、コンプライアンスに関して企業が取り組もうとする項目を具体的に定め、従業員にもこれを共有します。

 次に、②コンプライアンスに関わる研修(ハラスメント防止、情報セキュリティその他不祥事防止のための研修)を社内において実施します。どのようなテーマにするかは、その企業において、最も切迫し、あるいはインパクトの強いリスクに焦点を当てることになります。

 更に、③具体的なコンプライアンスの問題を担当する部署を設けます。具体的には「コンプライアンス委員会」、「リスクマネジメント委員会」などですが、定期的な委員会開催を行ってリスクを管理し、あるいは何か問題が生じたときに対応を協議するメンバーを選定します。場合によっては、顧問弁護士など外部の専門家にも出席を求め、将来リスクの防止に努めます。

 ④上記コンプライアンス担当の部署が中心となり、定期的にコンプライアンス違反の有無を監査し、問題があれば、再発防止のために改善提案を行うなどして、コンプライアンスの遵守が永続的に行われるように運用を行います。

 以上のような手順を踏んで導入したコンプライアンス体制にも、完璧なものは存在しません。常に、潜在的なリスクをあぶり出すための努力を続ける必要があります。

7 コンプライアンス体制構築・運用は弁護士にご相談を

コンプライアンス体制の強化を真剣に考えておられる経営者様におかれましては、必ず弁護士にご相談いただく必要があります。
他の士業(税理士、社会保険労務士)に相談をしているケースも散見されますが、過去に起こった事案に対する理解や具体的なトラブル解決の経験が違います。

弁護士に依頼されることで、コンプライアンス体制の構築に必要な各種社内規程(ハラスメント防止規程や就業規則等)の整備や、外部通報窓口、コンプライアンス意識改革のための社内研修・勉強会の実施など、具体的な体制構築を実施することができます。

企業が危機的なトラブルに瀕したときに責任を持って対応できるのは、経験を積んだ弁護士であり、他士業でもAIでもありません。
顧問契約の締結により、より日常的・機動的にコンプライアンス体制の構築・運用に携わることもできますので、是非一度、ご相談の上でご検討下さい。

Website | + posts

2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。

※日本全国からのご相談に対応しております。

取扱分野
福岡市の顧問弁護士相談
解決事例
お客様の声

お気軽にお問合せ、ご相談ください。 お気軽にお問合せ、ご相談ください。 メールでのご相談はこちら