インターネット上の掲示板、SNS、Google口コミサイトなどで、企業に対する誹謗中傷や虚偽の書き込みが投稿されるケースが急増しています。
「事実無根だから放っておけばいい」と考えてしまう企業も少なくありませんが、ネット上の悪評は放置するほど拡散し、企業価値や採用、取引に重大な影響を与えます。
特に福岡のように、地域内での取引関係や口コミがビジネスに直結するエリアでは、ネット上の風評被害が短期間で経営上のダメージに発展することも珍しくありません。
本記事では、企業が誹謗中傷・悪質な書き込みを削除するための具体的な手順を、弁護士が実務に即してわかりやすく解説します。
この記事でわかること
本記事では、次の点を具体的に解説します。
・企業への誹謗中傷を放置するリスク
・削除できる投稿/削除できない投稿の違い
・Google口コミ、SNS、掲示板など媒体別の削除方法
・送信防止措置依頼(任意削除)のやり方
・仮処分による迅速な削除手続
・発信者情報開示請求による投稿者特定
・弁護士に依頼するメリットと対応範囲
誹謗中傷を放置するリスク/早期対応の必要性
企業への誹謗中傷投稿は、それを受けた企業が気にしなければいいという類の単なる「悪口」では済まされません。これを放置すると、次のような深刻な経営リスクを引き起こすため、早期に削除等の対応をする必要があります。
信用失墜による取引停止・売上減少
インターネット上で「ブラック企業」「不正をしている」「詐欺会社」などの投稿が拡散すると、取引先が不安を抱き、契約解除や新規取引停止につながることがあります。
放置の程度によっては、社名を検索窓に入力しただけで「ABC商事 ブラック企業」といった検索候補が表示されるようになり、そこから取引先が投稿を知る可能性もあります。
さらに、銀行融資の審査や信用調査にも悪影響が生じ、資金調達の妨げとなることもあります。
採用活動への致命的ダメージ
現在、求職者の多くは応募前に必ず企業名を検索し、周辺情報を把握しようとします。
ところが、検索結果の上位に誹謗中傷が表示されたり、検索候補として表示されると、ネガティブ情報の調査・把握が先行し、優秀な人材ほど応募を避けるため、企業としての採用難に直結します。
その結果、採用単価が上昇し、長期的には組織の成長を阻害する危険があります。
炎上・拡散の連鎖(「叩けば反応しない企業」と見られる)
誹謗中傷に対し初動対応をしない場合、「この企業は叩いても反論しない」という誤ったメッセージを与えてしまい、攻撃者がさらに粘着的な投稿を繰り返すケースがあります。
結果として、投稿数が増え、炎上の火種となり、対応コストが大きく膨らみます。
削除できる投稿と削除できない投稿の違い
企業が誹謗中傷投稿の削除を求める際に最も重要なのは「削除が認められる投稿かどうか」を見極めることです。
削除の可否は、主に以下の2つの観点で判断されます。
・法律上の権利侵害があるか(名誉毀損、信用毀損、プライバシー侵害等)
・プラットフォームの利用規約に違反しているか
削除が認められやすい典型例(企業への誹謗中傷)
以下のような投稿は、削除対象となりやすい傾向があります。
・「この会社は詐欺をしている」など犯罪行為の断定
・「粉飾決算している」「横領している」など不正行為の断定
・「反社とつながっている」など社会的信用を著しく害する投稿
・虚偽の体験談を装った悪評(事実無根のクレーム)
・従業員の実名、顔写真、住所、電話番号などの晒し
・大量投稿による嫌がらせ(営業妨害目的)
・競合他社による悪意ある口コミ(いわゆるステマ逆方向)
このような投稿は、民法709条(不法行為)に基づく損害賠償請求の対象となり得ますし、刑法上も信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条、234条)に該当する可能性があります。
削除が難しい典型例(単なる低評価・感想)
一方で、次のような投稿は削除が難しい場合があります。
・「接客が悪かった」「二度と行かない」などの主観的評価
・「値段が高い」「雰囲気が悪い」などの感想
・実際の体験に基づく批判で、表現が社会通念上許容されるもの
企業側としては不本意でも、表現の自由の範囲内と判断され、削除が認められないこともあります。
そのため、削除請求を成功させるには、「どの権利侵害に該当するのか」を正確に整理し、証拠を添えて主張する必要があります。
サイト・SNSごとに異なる削除の難易度と対応方法
誹謗中傷の削除は、投稿された媒体によって難易度や手続が大きく異なります。
ここでは代表的な媒体について、特徴と対応方法を整理します。
Googleマップ(Google口コミ)の削除
店舗型ビジネスを展開する企業にとって、Google口コミは非常に影響が大きい媒体です。
Googleでは、口コミが「ガイドライン違反」であることが明確な場合に削除される可能性があります。
削除が認められやすい例は以下のとおりです。
・実際に利用していない者による虚偽レビュー
・差別的表現、脅迫、嫌がらせ
・個人情報の掲載
・関係のない宣伝リンク
・同一人物による連投
ただし、単なる低評価レビューは「消費者の意見」として扱われ、削除が通らないケースも多いため注意が必要です。
SNS(X・Instagram・Facebook等)の削除
SNSの特徴は「拡散スピードが極めて速い」ことです。
炎上が起きると、投稿が瞬く間に拡散し、削除してもキャプチャ画像が残り続けるケースもあります。
SNSで削除を求める場合は、各サービスの利用規約違反(誹謗中傷、ヘイト、プライバシー侵害等)を根拠に報告します。
しかし、運営側が「表現の自由」を重視して削除に応じない場合も多いため、状況によっては仮処分を検討する必要があります。
掲示板・口コミサイト(5ちゃんねる、爆サイ、ホストラブ等)の削除
匿名掲示板は誹謗中傷が集中しやすく、企業が狙われやすい媒体です。
掲示板は運営者が削除基準(削除ガイドライン)を定めており、まずはガイドラインに従った削除依頼を行う必要があります。
ただし、掲示板によっては任意削除に応じないことも多く、仮処分による削除が現実的な選択肢となる場合があります。
誹謗中傷を削除するための具体的手順(企業が取るべき初動対応)
誹謗中傷の削除には、主に以下の3段階があります。
ステップ1:証拠保全(削除依頼前に必ず行う)
最初に必ず行うべきなのが「証拠の確保」です。
投稿は削除される可能性がある一方、投稿者が自ら削除してしまう場合もあります。証拠が残っていないと、開示請求や損害賠償が困難になります。
最低限、以下を保存してください。
・投稿URL
・投稿日時
・投稿内容全文
・投稿者ID(アカウント名)
・画面全体のスクリーンショット
・可能であればウェブ魚拓等による保存
企業側で対応する場合も、この証拠保全が不十分だと、後から手続が行き詰まります。
ステップ2:サイト管理者への任意削除請求(送信防止措置依頼)
次に、サイト運営者・管理者に対して、削除を求める請求を行います。
この手続は一般に「送信防止措置依頼」と呼ばれ、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づき行われます。
削除請求が通るかどうかは、単に「迷惑だから消してほしい」という理由では足りず、「どの投稿が」「どの権利を侵害し」「なぜ違法なのか」を具体的に主張する必要があります。
主張の根拠としては、名誉毀損(社会的評価の低下)、信用毀損・業務妨害、プライバシー侵害、営業権侵害といった典型的な権利侵害を指摘することが必要となります。
ステップ3:裁判所による削除(仮処分)
任意削除に応じない場合、裁判所に対して「投稿の削除を命じる仮処分」を申し立てることが可能です。
仮処分は通常訴訟よりもスピーディーに判断が出るため、ネット上の被害回復では非常に有効です。
誹謗中傷が検索結果に残り続けている状況では、時間が経つほど損害が拡大します。
そのため、企業の風評被害対策では、仮処分を前提に動くことが現実的なケースも多くあります。
投稿者を特定する方法~発信者情報開示請求と損害賠償
削除だけでは、根本的な解決にならないことがあります。
投稿者が同じ内容を別サイトに転載したり、アカウントを変えて再投稿するケースがあるためです。
悪質な投稿者に対しては、発信者情報開示請求を行い、投稿者の氏名住所を特定したうえで責任追及を行うことが可能です。
発信者情報開示請求の流れ
発信者情報開示請求は、一般に次の流れで進みます。
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サイト管理者に対しIPアドレス等の開示を求める
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開示されたIPアドレスからプロバイダ(通信会社)を特定
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プロバイダに対し契約者情報(氏名住所)の開示を求める
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投稿者を特定し、損害賠償請求・刑事対応を検討
この手続には法的専門性が必要であり、初動の証拠保全が不十分だと、特定に至らないこともあります。
損害賠償請求・刑事対応が可能なケース
投稿内容が悪質な場合、企業は以下の対応を検討できます。
・民法709条に基づく損害賠償請求(慰謝料、営業損害)
・信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条、234条)として刑事告訴
・名誉毀損罪(刑法230条)として刑事告訴
特に、競合他社や元従業員による悪意ある投稿の場合、企業防衛の観点から毅然とした対応が必要となります。
誹謗中傷対策を弁護士に依頼するメリット
ネット上の誹謗中傷問題は、ITの知識と法律の知識が複合的に必要となります。
弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
迅速な削除対応が可能になる
弁護士名義での通知・削除請求は、サイト管理者側が真摯に対応する確率を高めます。
また、任意削除が難しい場合でも、仮処分の申立てまで迅速に移行できるため、被害拡大を防ぎやすくなります。
削除率を左右する「法的構成」を正確に整理できる
誹謗中傷削除は、感情論では通りません。
弁護士が関与することで、①どの権利侵害に該当するか、②違法性がどこにあるか、③どの資料を揃えるべきかを整理し、削除成功率を高めることができます。
投稿者特定から損害賠償まで一貫対応できる
誹謗中傷問題は、削除だけで終わらないことが多い分野です。
弁護士に依頼すれば、削除対応に加えて、
・発信者情報開示請求
・示談交渉
・損害賠償請求訴訟
・刑事告訴のサポート
までワンストップで対応可能です。
企業担当者が本業に集中できる
誹謗中傷対応は精神的負担が大きく、対応を誤ると炎上が拡大する危険もあります。
弁護士が窓口となることで、加害者やサイト管理者とのやり取りをすべて任せられ、企業担当者は経営判断に集中できます。
福岡で弁護士に相談する意義/地元企業の風評被害に即した対応
誹謗中傷問題は全国共通の法制度で対応できますが、福岡の企業の場合、地元取引先や地域社会との関係性が経営に与える影響が大きいことが特徴です。
そのため場合によっては、取引先に対する説明が必要となることや、顧客への広報的な対応まで必要となる可能性もあります。また、従業員への社内説明、採用活動への影響を踏まえた対応など、内部的にも経営課題としての認識が必要で、単なる削除手続だけではなく、企業防衛の観点からの総合的な対応が求められます。
福岡のビジネス環境を理解した弁護士に相談することで、より実務に即した解決策を提案できる場合があります。
誹謗中傷削除にかかる期間の目安
誹謗中傷対策は、手続によってスピードが異なります。
一般的な目安は以下のとおりです。
⑴ 任意削除(送信防止措置依頼):数日~数週間
⑵ 裁判所の仮処分:1~2か月程度
⑶ 発信者情報開示請求:3~6か月程度
ただし、サイト運営者の対応姿勢や、投稿が海外サーバーの場合などにより、期間は変動します。
よくある質問(FAQ)
Q. Google口コミは削除できますか?
ガイドライン違反が明確な場合は削除される可能性がありますが、単なる低評価レビューは削除が難しい場合もあります。
Q. 削除依頼をすると投稿者にバレますか?
任意削除の段階では投稿者に通知されないこともありますが、開示請求や裁判手続に進む場合は投稿者に手続が伝わることがあります。
Q. 匿名投稿でも投稿者を特定できますか?
IPアドレス等の情報が残っていれば、発信者情報開示請求により特定できる可能性があります。ただしログ保存期間の問題があるため早期対応が重要です。
Q. 削除できない場合もありますか?
あります。投稿が意見・感想にとどまる場合や、違法性が認められない場合は削除が難しいことがあります。
Q. 誹謗中傷の削除にはどれくらい費用がかかりますか?
手続(任意削除・仮処分・開示請求)や投稿件数によって異なります。事案に応じて見積もりを提示するのが一般的です。
まとめ~悪質な書き込みには法的措置で毅然と対応を
企業への誹謗中傷は、名誉毀損、信用毀損または業務妨害として違法となる可能性があります。
特にネット上の風評被害は、放置すればするほど拡散し、採用・売上・取引関係に深刻な悪影響を与える可能性が否定できません。
重要なのは、日頃から自社への悪質な書き込みがなされていないか定期的にチェックすること、投稿を発見した時点で迅速に証拠を確保し、適切な方法で削除や投稿者特定を進めることです。
当事務所では、送信防止措置依頼、仮処分による削除、発信者情報開示請求、損害賠償請求まで一貫して対応しています。
福岡で誹謗中傷・風評被害にお困りの企業様は、被害が拡大する前に早めにご相談ください。
2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。
※日本全国からのご相談に対応しております。





