退職した従業員が労働局のあっせん手続を申請。どう対応すべき?|福岡の顧問弁護士

元従業員からのあっせん手続の申請があったときに使用者側はどう対応すればよいか?

退職した従業員からあっせんの申請があり、労働局から通知が来た場合、使用者としてはどのように対応するべきでしょうか。
例えば、退職した従業員がパワハラを受けたと言っているが、使用者としてはパワハラには当たる事実はなく、賠償の義務がないのだから譲歩はできないと反論したいという事案で考えてみます。

労働局の紛争調整委員会によるあっせん手続とは

労働局の紛争調整委員会が行うあっせん手続は、紛争当事者の間に、公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入り、双方の主張の要点を確かめ、調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。

利用するのに費用がかからず、裁判に比べて手続が迅速かつ簡便であることや、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家である紛争調整委員が第三者として関与するため、公正さが担保されているということができます。

原則として、1回の期日で終了し、当事者双方が求めた場合には、両者に対してあっせん案が提示され、それが受諾されると、あっせん成立で紛争が解決します。

あっせん手続は白黒をつける場ではない

参加する使用者側には、自分たちの考え方が正しいということを申請人に理解させてほしい、という動機で対応するケースがあります。

しかし、あっせんの手続上、紛争調整委員(あっせん委員とも言います。)から「正しい」とか「間違いだ」といったジャッジを示すことはありません。条文や解釈などを一般論として説明しても、当該事件の結論を示すことはないのです。それは、あっせんが当事者相互の譲歩によって合意して紛争解決を目指す手続であって、どちらが正しいという判断を下す手続ではないからです。

つまり、申請人が間違っているはず、白黒つけたい、と思って出席した雇用主側は、肩透かしを食らう可能性が高いということです。

とはいえ、あっせん委員が行うことは、「双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように」することです(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第12条2項)。
そのため、例えば、パワハラに当たらないことが明白な事案において、使用者側に高額な解決金を支払うよう説得するようなことはないですが、反対に、パワハラに当たるような違法な行為があったことを双方とも認めているようなケースであれば、それなりの解決金が支払われる方向に当事者を誘導していく、ということはあり得ます。

あっせん手続だからこその『視点』

では、使用者側において、従前から申請人と言い分が真っ向から対立しているため、損害賠償責任を認めることが考えられない、というときは、出席しない方がいいのでしょうか。

あっせん手続・調停手続が通常の裁判と異なる点は、譲歩することが、必ずしも申請人の主張を飲むことと同義というわけではないという点です。

法的責任は否定しながらも、経緯において一定の落ち度があることを認識し、その結果、使用者側が譲歩に至るというケースは珍しくありません。

一方で、法的責任がない以上は金銭的な譲歩は一切しない、という使用者側は、そもそも出席する必要もないのかもしれません。もちろん、そのような強硬な姿勢が、申請人側の戦意を喪失させる、という可能性は否定できませんし、後日の訴訟の前哨戦と捉えて対応することも一つの選択ではありますが、1回期日で比較的低額な和解金で決着を図るというあっせん手続のメリットを正確に理解して期日に臨む使用者は、意外と少ないのではないかと思われます。

ただ、目線を変えると、あっせん手続において、あっせん委員や紛争調整官からの指摘を受けると、使用者側において、今後の雇用管理が改善されるきっかけになることはあり得ます。第三者の視点を取り入れるべく対応する、というのも一つのスタンスだろうと思います。

当事務所の労務トラブルに対するスタンス

当事務所が労働事件の依頼を受けるときは、専ら使用者側で対応することとしています。旗色を鮮明にすることで、既存のクライアントからも信頼されるパートナーであり続けたいと考えています。

あっせん手続を申し立てられた場合に、どのように対応すべきか、ということについても、その後の訴訟等の経験をも踏まえた的確なアドバイスをすることができます。ホワイト企業化を推し進めることと、ただ従業員に甘くすることとは、全く異なりますので、状況に応じた適切な対応について、法的観点と人事労務の観点からアドバイスします。

トラブルの予防と早期解決のため、いつでもお気軽にご相談ください。

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2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。

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