有期雇用社員の雇止めが違法となる場合とは【福岡で企業法務に強い顧問弁護士】

有期雇用契約に対する法的規制

有期雇用契約とは、期間の定めのある労働契約のことを言います。
有期雇用社員(有期雇用労働者)という枠組みには、契約社員、嘱託社員などのフルタイム勤務の社員も、パート、アルバイトなどの短時間労働の社員も、期間の定めがある限り含まれます。

契約期間を定める場合、一定の事業の完了に必要な期間を定める場合の他には原則として3年を超える期間を定めることはできず、「高度の専門的知識を有する労働者」と「満60歳以上の労働者」の場合には例外として最長5年までの期間を定めることができます。

契約期間の定めがある以上、契約更新をしなければ、期間満了とともに雇用契約は終了するのが原則です。

ただ、有期雇用社員でも契約更新が繰り返されるケースにおいて、無期雇用社員が解雇権濫用法理によって保護されるのと同じように保護されるべき、という要請が働くようになり、多くの裁判例で雇止めが無効とされる例が見られるようになりました。

その結果、雇止め法理として、労働契約法19条が、有期労働契約の更新を拒絶する雇止めが無効となり、契約が更新したものとみなされる場合を定めるに至りました。

有期雇用契約の雇止め法理とは

この労働契約法19条は、1号と2号からなります。

1号は「実質無期契約型」と言われる類型で、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っていると同視できる場合です。

過去の裁判例として、東芝柳町工場事件(最判昭和49年7月22日)がリーディングケースであり、契約期間2カ月として採用された基幹臨時工の従業員複数名がそれぞれ5回から23回の更新を繰り返した後に雇止めとなったケースで、諸般の事情から当然更新されるべき契約として、実質的に期間の定めのない契約と異ならないとされた事案があります。

一方、2号は「期待保護型」と言われ、労働者が雇用継続を期待することについて合理的な理由があると認められる場合です。

この類型の代表的な裁判例は日立メディコ事件(最判昭和61年12月4日)で、2か月の有期労働契約を5回にわたり更新された工場の臨時員が雇止めになったケースで、簡易な手続きで採用されていたことや、従事する職務内容も本工より簡易なものであったこと等から、臨時工に契約更新の合理的期待があったとは認められず、雇止めが適法とされた事案です。

雇止め法理の適用があるかどうかの判断基準とは

過去の裁判例を通じて、これらの類型のいずれかに当たると言えるかどうかは、業務の客観的内容、契約上の地位の性格、当事者の主観的態様、更新の手続・実態、他の労働者の更新状況その他の事情から判断されることと考えられています。

ただ、この判断基準は、必ずしも明確な基準とは言えず、実際に問題となる事案ごとに判断していくしかありません。
裁判例の傾向としては、契約更新の手続が定められ、それが履践されていると、1号に該当すると認めるのは難しくなり、その場合、使用者の言動などによって雇用継続に合理的な期待が生じていたなどとして2号に該当するかどうかがポイントになる、といった形で検討されることが多いと思われます。

いずれかの類型に当たると認められた場合には、客観的合理性・社会的相当性を欠く雇止めは無効とされることになるため、使用者側としては、できる限り上記基準を意識して契約更新の仕方を見直したり、契約更新の期待を抱かせるような言動を控えるようにするなど、日ごろから契約期間を意識した運用を心がけることが必要となってきます。

 

 

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2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。

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