休職と復職を何度も繰り返す社員にどう対処するか?弁護士が解説!【人事・労務】

典型的なケース

入社して5年目の従業員が、家庭内の問題でストレスを抱えてしまい、次第に遅刻や欠勤が多くなりました。その後、病院で統合失調症と診断されたとの報告があったため、当社の就業規則上の休職条項を適用して、休職させました。3か月ほどが過ぎ、本人からは回復したとの連絡があったため、再び出勤してもらいましたが、半年もせずに欠勤が増え、再び休職させることとなり、休職と復職が3回ほど繰り返され、現在は4回目の休職期間中です。この従業員には、もう退職してもらうしかないと思いますが、どうやって退職させたらいいでしょうか。

休職期間満了時の退職処理について

就業規則上の休職に関する条項では、私傷病での休職期間が満了する時点でその傷病が回復していない場合(休職事由が消滅していないとき)には退職とする旨を定めていることが多いです。

このような条項は、法的には原則として有効です。そもそも休職の定めは、私傷病で勤務ができない状況の従業員についての解雇や退職を一定期間猶予して、その傷病の回復を待つという制度で、基本的には従業員にとって有利な定めです。従業員を解雇する場合には、解雇権の濫用として無効にならないか、という問題がありますが、休職期間満了での退職の場合に「解雇権濫用」という問題は生じません。ただし、復職の可能性があるにもかかわらず、復職を認めなかった場合は、休職事由が消滅していた、ということになるので、退職扱いはできないことになります。そこで、休職事由が消滅し、復職可能と言えるかどうかがポイントとなります。

復職が可能かどうかの判断とは

要するに、休職期間満了前に傷病が「治癒」したと言えるかどうか、ということですが、過去の裁判例では、職種や職務が特定されていたかどうかによって判断が異なります。例えば、技術職に限定して採用された場合には、休職前の健康だった頃と同じ程度に技術職としての業務が行えなければ、休職事由が消滅していたとは言えません。一方で、技術職に限定したのでなければ、例えば事務職ならできる状態までは回復しており、事務職への配置転換が可能という状況なら、配置転換して復職させる必要があるということになり、退職扱いはできないことになります。このような判断の要素として、「その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等」を考慮するように、判例は求めています。現実に判断する際には、専門家のアドバイスを求めることは必須だと思いますので、労働問題に使用者側で取り組んでいる弁護士に相談していただくべきだと思います。

設問のケースでの対処の仕方

現時点で休職期間満了時の自然退職制度がなければ、解雇を検討することになります。その場合でも、基本的には自主退職を求める「退職勧奨」を先行し、本人との面談を重ねるべきだと思います。

休職期間満了時の退職扱いができる可能性があれば、従業員からの復職の申出があったときに、診断書等を提出させ、従前と同様の仕事ができるかどうか、配置転換の可能性も考慮に入れ、これまで復職後に再び休職に至った経緯も振り返って、検討します。検討に際しては、従業員との面談において希望を聞き、判断に迷う場合には、時間短縮でのトライアル復職を行うなどして判断することになります。

休職と復職を繰り返す従業員が現れたときのためにすべきこと

まず、現在の就業規則に休職期間の“通算条項”がない場合には、これを導入しましょう。

通算条項とは、一回の休職では自然退職にならない場合でも、休職と復職を繰り返している場合には、休職期間を通算して一定期間を経過した場合に、退職扱いができるようにするための規定です。

ただし、これは従業員にとって就業規則の不利益変更に当たるとされる可能性が高いため、従業員の同意を取るようにしましょう。

加えて、休職者の病状報告義務を定めることも有効です。休職期間中に、病名及び休職の必要性等を記載した医師の診断書を添えて、会社に病状を報告しなければならないという条項を設けます。

休職を繰り返す従業員の解雇を検討しているという企業経営者は、実際に処分を行う前に、福岡・天神の弁護士で労務問題の経験が豊富な弁護士にご相談下さい。

福岡で使用者側の労働問題に強い弁護士

休職と復職を何度も繰り返す社員に関するご相談は、実績のある弁護士にお任せください。

「労働問題に強い弁護士」に相談するのはもちろん、普段から就業規則など自社の労務環境の整備を行っておくために使用者側の労働問題に強い弁護士にすぐに相談できる体制にもしておきましょう。

顧問弁護士に関する具体的な役割や必要性、相場などの費用については、以下の記事をご参照ください。

福岡市の弁護士との顧問契約締結を検討しておられる企業様へ

【地下鉄天神駅直結】メールや電話でのご相談でも、迅速に対応いたします。

 

Website | + posts

2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。

※日本全国からのご相談に対応しております。

取扱分野
福岡市の顧問弁護士相談
解決事例
お客様の声

お気軽にお問合せ、ご相談ください。 お気軽にお問合せ、ご相談ください。 メールでのご相談はこちら