1.建物買取請求権とは
建物買取請求権とは、建物の所有を目的とする土地の借地権の期間が満了した時に、借地権者(土地を借りている側)の請求により、建物を時価で買い取るよう地主(土地の賃貸人)に請求することができる制度です(借地借家法第13条・第14条)。
借地契約が終了する局面では、地主側・借地権者側のいずれにとっても、この権利が認められるかどうかが重要な論点になります。借地権者にとっては残存する建物の資産価値を回収する手段となり、地主にとっては建物代金の支払い義務と収去費用の双方を負担するリスクになります。
2.事業用定期借地権との関係——適法に設定されているかの確認が重要
事業用定期借地権(借地借家法第23条)を設定した場合には、建物買取請求権に関する規定の適用が排除されます。したがって、事業用定期借地権が適法に設定されていれば、借地権者は期間満了時に建物買取請求権を行使することができません。
ただし、事業用定期借地権の設定は公正証書によらなければならず(借地借家法第23条第3項)、この要件を満たしていないために定期借地権として有効に成立していないケースも稀にあります。地主側としては契約形式の適法性を、借地権者側としては契約の有効性を、それぞれ改めて確認しておくことが重要です。
3.建物買取請求権が認められない場合——個別の事情が決め手になる
建物買取請求権は常に認められるわけではありません。土地・建物の権利関係の具体的な状況によっては、行使が否定される場合があります。地主側にとっては権利行使を拒める根拠となり、借地権者側にとっては請求前に確認すべきリスクとなります。
① 建物が複数の土地にまたがって建っている場合
建物が所有者を異にする数筆の土地にまたがって建っているような場合には、当該所有地上にある建物部分について区分所有の対象となる場合でない限り、建物買取請求権の行使が認められないとされています(最判昭和42年9月29日・民集21巻7号2010頁等)。
② 建物の持分のみを対象とする場合
近年の最高裁判例(最判令和8年8月28日)は、賃借権の目的である土地の上にある建物の持分について建物買取請求権を行使することはできないと判示しており、建物が共有に係る場合には建物買取請求権が行使できないことも示唆しています。
③ 建物が特殊な用途である場合
建物が特殊な用途であるような場合にも、建物買取請求権の行使が否定される可能性があります(築40年以上経過した公衆浴場に係る東京地判平成13年11月26日・判タ1123号165頁)。
4.借地契約終了時に向けた実務上のポイント
地主側(土地の賃貸人)として
借地権者から建物買取請求権を行使された場合、建物代金の支払い義務を負うのみならず、新たに土地を活用しようとすれば建物の収去費用も別途負担が生じます。建物買取請求権が行使できない事情(上記①〜③等)が存在しないかを事前に確認したうえで、借地契約終了に向けた交渉に臨むことが重要です。
借地権者側(土地を借りている企業・事業者)として
借地期間満了時に建物買取請求権を行使するためには、権利行使が認められる状況にあるかを事前に確認する必要があります。特に、建物が複数筆の土地にまたがっている場合や共有関係がある場合は、上記の裁判例を踏まえた慎重な検討が必要です。また、事業用定期借地権として契約が成立しているかどうかの確認も、権利行使の前提として重要な論点になります。
建物買取請求権が認められるかどうかは個別の事情によって判断が分かれるため、借地契約の終了が近づいている段階で、不動産案件に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
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2006年、福岡県弁護士会に弁護士登録。
企業法務(使用者側での労務問題、契約書チェック、コンプライアンス体制の整備)、交通事故での損害賠償請求、相続、離婚などの家事事件、企業の事業再生・債務整理その他一般民事、刑事事件等に取り組む。
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