フランチャイズ契約のトラブル——中途解約・違約金・競業避止と独禁法上の注意点を弁護士が解説

フランチャイズ契約は、本部と加盟店が長期にわたって密接な関係を続ける契約です。それだけに、いったん利害が対立すると、契約書の一条項が数千万円単位の帰結を生むことがあります。

本コラムでは、フランチャイズ契約をめぐって実際に問題となる場面を、本部側・加盟店側それぞれの視点から整理し、契約設計と紛争対応の実務上のポイントを解説します。

1.フランチャイズ契約で実際に問題になる場面

(1) 中途解約——違約金と競業避止義務が同時に効いてくる

実務上、相談として持ち込まれることが多いのは、加盟店が中途解約を検討している段階です。すでに紛争化してからではなく、「辞めたいがどうすればよいか」という相談の形で来ます。

この場面で加盟店側のネックになるのが、中途解約時の違約金条項と、契約終了後の競業避止義務条項です。違約金を払って抜けたとしても、競業避止義務によって同業種での営業が一定期間・一定地域で禁止されるのであれば、加盟店にとって「辞める」という選択肢自体が実質的に閉ざされます。この2つの条項が組み合わさることで、加盟店の離脱を強く抑止する構造が作られます。

本部側は、こうした条項について強硬な姿勢をとることが多く、交渉で譲歩を引き出すのは容易ではありません。ただし、実務上の交渉材料がないわけではありません。加盟店が相応の売上を確保している場合、本部としてもその店舗を失うことの損失は無視できません。ロイヤリティ収入の喪失、チェーン全体の売上への影響、後継の加盟店を見つけるコストを考えれば、本部が条件変更に応じる余地は生まれます。実際に、当初の契約を締結し直すことで解決に至ったケースもあります。

(2) 取引先の固定・販売価格の拘束——独禁法上の問題

もう一つ実務上問題になりやすいのが、本部による加盟店への各種の拘束です。仕入先や内外装工事の依頼先を本部または本部指定業者に限定する、販売価格を本部が指定する、といった条項や運用が典型です。

公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(フランチャイズ・ガイドライン)は、こうした拘束について明確な基準を示しています。ガイドラインは、仕入先の指定や営業方法の制限といった条項自体は、本部が供与した営業の秘密を守り、統一したイメージを確保する目的によるものであり、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度にとどまるものであれば、直ちに独禁法上問題となるものではないとしています。

逆に言えば、その限度を超えた場合には優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)に該当します。ガイドラインが例示するのは、正当な理由がないのに、本部または本部指定業者とのみ取引させることにより、良質廉価で商品・役務を提供する他の事業者と取引させないようにする行為です。加盟店が独自に安価な仕入先を見つけているにもかかわらず、品質上の理由もなく本部指定業者からの仕入れを強制するといった運用は、この類型に該当する可能性があります。

販売価格の拘束についても同様です。本部が推奨価格を示すことは可能ですが、加盟店の価格決定の自由を実質的に奪う運用は、再販売価格の拘束(独占禁止法第2条第9項第4号)として問題になりえます。

2.本部が「優越的地位」にあるかの判断——契約設計にも影響する

優越的地位の濫用が成立するには、まず本部が加盟店に対して「取引上優越した地位」にあることが必要です。ガイドラインは、これを「加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、本部の要請が著しく不利益なものであってもこれを受け入れざるを得ないような場合」と定義しています。

その判断にあたって考慮される要素は次のとおりです。

  • 加盟店の本部に対する取引依存度(経営指導への依存度、本部・推奨先からの仕入割合)
  • 本部の市場における地位
  • 加盟店の取引先の変更可能性(初期投資の額、中途解約権の有無と内容、違約金の有無と金額、契約期間)
  • 本部と加盟店の事業規模の格差

ここで注目すべきは、違約金の額や中途解約権の制限そのものが、優越的地位を基礎づける事情として考慮されている点です。本部側として加盟店の離脱を抑止する条項を積み上げれば積み上げるほど、優越的地位が認定されやすくなり、その他の要求が濫用と評価されるリスクが高まるという構造になっています。契約設計にあたっては、この相関関係を意識しておく必要があります。

3.本部側の契約設計——「離脱の抑止」をどこまで積むか

本部側の立場で契約書を設計する際、実務上最も重要になるのが競業避止義務条項と中途解約時の違約金条項です。この2つが、加盟店の離脱に対する抑止力の中核をなします。

ただし、どこまで積むかは本部の経営思想によって変わります。

ノウハウの保護と加盟店の維持を最優先する方針であれば、合法の範囲内で最大限の拘束を設計することになります。この場合、競業避止義務の期間・地域・業種の範囲、違約金の算定方法、残存期間のロイヤリティ相当額の請求といった条項を精緻に組み立てます。

他方、加盟店がFCから離脱して独立することを一つの成長モデルとして奨励する方針の本部もあります。この場合、本部として回収すべきは最低限の投下資本であるという発想になり、違約金は初期投資の未回収分を回収する水準にとどめ、競業避止義務も限定的なものとする設計になります。加盟希望者を集めやすくなるという効果も期待できます。

どちらが正解ということではなく、本部としてどのようなチェーンを作りたいかという事業戦略の問題です。契約書の設計は、その戦略を法的な形に落とし込む作業であり、方針が定まらないまま条項だけを厳しくすると、加盟店の獲得に支障が出たり、優越的地位の濫用のリスクを高めたりすることになります。

なお、競業避止義務条項は、期間・地域・対象業務の範囲が過度に広汎であれば、公序良俗違反(民法第90条)として無効と判断されるリスクがあります。「合法の範囲内で最大限」を狙うほど、この境界の見極めが重要になります。

4.契約締結前の情報開示義務——中小小売商業振興法とガイドライン

フランチャイズ契約の締結前には、法令およびガイドラインに基づく情報開示が求められます。この点は、本部側にとって見落とせない実務上の義務です。

(1) 中小小売商業振興法による法定開示義務

中小小売商業振興法は、特定連鎖化事業(小売業・飲食業のフランチャイズチェーン)を営む本部に対し、加盟希望者との契約締結前に、事業概要や契約の主な内容等を記載した書面(法定開示書面)を交付し、説明することを義務付けています。

2021年(令和3年)の省令改正により、開示項目が追加されています。特に実務上重要なのが、加盟店の店舗のうち、立地条件が類似するものの直近3事業年度の収支に関する事項です。加盟希望者が出店を検討している立地と条件が類似する既存店舗の収支データを開示する必要があります。ただし、既存加盟店の個別データは営業秘密にあたるため、店舗が特定されないよう配慮したうえで開示することが求められます。

(2) 独禁法ガイドラインによる開示——業種を問わず適用

中小小売商業振興法の適用は小売業・飲食業に限られますが、公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインは、業種を問わずすべてのフランチャイズチェーンに適用されます。サービス業などで中小小売商業振興法の適用がない場合でも、ガイドラインが示す開示項目への対応は必要です。

ガイドラインは、加盟者募集にあたって虚偽または誇大な開示を行うことを「ぎまん的顧客誘引」として問題視しています。特に注意が必要なのが売上予測・収益予測の提示です。予測を示すこと自体は禁じられていませんが、その根拠となる算定方法や類似店舗のデータを併せて示す必要があり、根拠の乏しい楽観的な予測を提示すれば、後に加盟店から損害賠償請求を受ける原因となります。

この点は、契約書における「売上を保証するものではない」旨の条項の設計とも直結します。契約書に非保証条項を置いていても、契約前の説明段階で根拠なく高い売上予測を示していれば、その条項だけで責任を免れることはできません。契約書の条項と、契約前の説明の実態が一致していることが重要です

なお、日本フランチャイズチェーン協会は自主基準として、加盟希望者との契約締結にあたり7日間以上の熟考期間を確保することを定めています。法令上の義務ではありませんが、後に「十分な検討機会がなかった」と主張されるリスクを下げる実務対応として有用です。

5.加盟店の経営破綻に備える

加盟店が経営に行き詰まった場合、本部としては未回収のロイヤリティ・商品代金の回収と、契約関係の整理という2つの課題に直面します。事前の契約設計で備えられる点を整理します。

(1) 加盟保証金と相殺予約

加盟時に保証金を預かる設計は、加盟店の破綻時における最も実効的な備えです。加盟店が破産した場合、本部は未回収債権と加盟保証金返還債務とを相殺することで、事実上の優先回収を図ることができます。契約書には、保証金の充当順序と相殺の可否を明記しておく必要があります。

コンビニエンスストアのFC契約では、本部と加盟店の債権債務を自動的に貸借記帳する勘定(いわゆるオープンアカウント)を設け、契約終了時に保証金・敷金と最終清算金を清算する仕組みが採用されています。中小規模のチェーンでも、債権債務の相殺関係を契約書上明確にしておくことは有効です。

(2) 期限の利益喪失条項と無催告解除条項

加盟店が差押え・仮差押え・強制執行を受けたとき、支払停止・手形不渡りとなったとき、破産・民事再生の申立てがあったときなどを列挙し、これらの事由が生じた場合に催告を要せず契約を解除でき、かつ債務の期限の利益を喪失する旨の条項を設けておくことが重要です。相手方の信用が悪化してから催告期間を待っていては、他の債権者に先を越されます。

(3) 代表者個人からの連帯保証・個人に対する競業避止義務

加盟店が法人の場合、その法人が破産して消滅すれば、法人に課していた競業避止義務や秘密保持義務も消滅します。その結果、旧加盟店の代表者が、本部から提供されたノウハウを用いて同業を再開するという事態が生じえます。

これに備えるには、契約時に代表者個人を当事者として、競業避止義務・秘密保持義務を課しておくことが有効です。同様に、代表者個人からの連帯保証を取得しておけば、法人破産後も個人に対する債権回収の道が残ります。ただし、個人根保証については極度額の定めが必要であり(民法第465条の2)、事業のために負担する債務の個人保証については公正証書による保証意思確認が必要となる場合があります(民法第465条の6)。

(4) 店舗の明渡し・原状回復・什器の処理

契約終了時の店舗明渡し期限、原状回復義務の範囲と費用負担、本部が貸与した什器・設備・看板の返還方法を明確に定めておくことも必要です。特に、店舗の賃貸借契約の名義が本部にあるのか加盟店にあるのかによって、破綻時の処理が大きく変わります。

債権回収の実務全般については「売掛金・貸金が回収できないとき」もあわせてご参照ください。

まとめ

① 実務上多いのは中途解約の場面。違約金条項と競業避止義務条項が組み合わさることで、加盟店の離脱が実質的に困難になる。ただし加盟店が相応の売上を確保していれば、本部側も条件変更に応じる余地がある。

② 取引先の固定・販売価格の拘束は、「システムを的確に実施する限度」を超えれば優越的地位の濫用となる。正当な理由なく本部指定業者との取引を強制する運用は特に問題になりやすい。

③ 違約金の額や中途解約権の制限そのものが、本部の優越的地位を基礎づける考慮要素とされている。離脱抑止条項を積み上げるほど、他の要求が濫用と評価されるリスクが高まる。

④ 本部側の契約設計は、加盟店を強く拘束する方針か、独立を奨励し投下資本の回収を主眼とする方針かという事業戦略によって変わる。方針を定めずに条項だけ厳しくするのは得策でない。

⑤ 契約前の情報開示は、中小小売商業振興法(小売・飲食)と独禁法ガイドライン(全業種)の両方から求められる。2021年改正により類似立地店舗の直近3期の収支開示が追加された。根拠の乏しい売上予測の提示は損害賠償リスクに直結する。

⑥ 加盟店の破綻に備えるには、加盟保証金と相殺の設計、無催告解除・期限の利益喪失条項、代表者個人への競業避止義務と連帯保証、明渡し・原状回復の取決めが要点となる。

当事務所では、フランチャイズ契約について、本部側・加盟店側のいずれの立場でもご相談をお受けしています。本部側では契約書の設計・情報開示体制の整備・加盟店とのトラブル対応を、加盟店側では契約締結前のリーガルチェック・中途解約の可否の検討・本部との交渉を、それぞれサポートしています。

契約書のチェックポイント全般については「契約書を受け取ったら、まずここを見る——弁護士が実務で使う4つの読み方」をご参照ください。

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2006年、福岡県弁護士会に弁護士登録。
企業法務(使用者側での労務問題、契約書チェック、コンプライアンス体制の整備)、交通事故での損害賠償請求、相続、離婚などの家事事件、企業の事業再生・債務整理その他一般民事、刑事事件等に取り組む。
企業内の研修やセミナー開催の実績多数。
法律事務所として弁護士の質とサービスレベルの高さを磨き、地域経済、地域社会に貢献することを事務所の理念とする。

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