メンタル不調の社員への対応|休職・復職・退職の判断を使用者側弁護士が解説

従業員のメンタル不調は、いまや業種や規模を問わず、どの会社にも起こりうる問題です。そして対応を誤ったときの代償が最も大きい労務問題のひとつでもあります。

休職を命じるべきか、復職を認めてよいか、退職の扱いにできるか——これらはいずれも、判断を誤れば無効と評価され、多額の賃金支払いや損害賠償につながります。しかも判断を迫られるのは、たいてい制度が整っていない状態で、突然です。

このページでは、使用者側の労務問題を専門に扱う当事務所が、メンタル不調社員への対応について、場面ごとの判断枠組みと関連する解説記事をまとめています。いま直面している問題がある方は、下記の一覧から該当する場面をお選びください。

1.メンタル不調対応で会社が判断を誤りやすい3つの場面

ご相談を受けるなかで、判断が分かれやすく、かつ後に紛争化しやすい場面は概ね次の3つに集約されます。

休職を命じるタイミング——欠勤が続いているものの本人が休職を希望しない、あるいは診断書が出ていない段階で、会社が休職を命じられるか。就業規則の定め方によって結論が変わります。

復職の可否——主治医が「復職可能」と診断したが、会社としては到底働ける状態に見えない。この判断を誤ると、復職拒否が違法とされるか、逆に不十分な状態での復職を認めて安全配慮義務違反を問われるか、どちらにも転びます。

業務起因性の有無——不調の原因が業務にあるのか、私生活上の事情なのか。ここが労災認定、安全配慮義務、解雇の可否のすべてに影響します。

いずれも、就業規則の記載と、その時点までに会社がどのような手順を踏んでいたかによって結論が変わります。逆に言えば、問題が起きてから対応を考えるのでは遅く、制度と手順を整えておくことが最大の防御になります。

2.いま直面している場面から探す

該当する場面の解説記事をご覧ください。

直面している場面 解説記事
欠勤が続く社員に休職を命じたい メンタル不調の従業員に休職を命じるタイミングと手順
復職を認めてよいか判断がつかない メンタル不調で休職した従業員の復職の可否について
休職と復職を繰り返している 休職と復職を何度も繰り返す社員にどう対処するか
休職期間が満了しようとしている 休職期間満了・自然退職の有効要件
私生活上の事情による不調への対応 うつ病・適応障害などメンタル不調の社員にどう対応するか
労災を主張された・業務起因性が争われている 精神疾患(うつ病・適応障害)の労災認定と会社の責任
統合失調症など、対応が難しい疾患 統合失調症を患っている社員の解雇
従業員が自殺した 従業員が自殺した場合に会社の対応はどうするか
これから体制を整えたい 従業員のメンタルヘルスに関わる具体的な対応と留意点

3.休職を命じる前に整えておくべきこと

私傷病休職は、法律上の制度ではありません。会社が就業規則で定めて初めて存在する制度です。そのため、就業規則にどう書かれているかが、そのまま会社の打てる手の範囲になります。

実務上、次の点が定められていないために対応に窮するケースが目立ちます。

●休職を命じる要件(欠勤が何日続いたときか、断続的な欠勤を含むか)

●会社が指定する医師の受診を命じられるか

●休職期間の長さ、勤続年数による差、通算規定の有無

●復職の判断権限が会社にあることの明記

●休職期間満了時の効果(自然退職か解雇か)

とりわけ会社指定医の受診を命じる根拠規定と、復職の可否を最終的に会社が判断すると定めた規定は、後の紛争で決定的な意味を持ちます。主治医の診断書だけで判断せざるを得ない状況に追い込まれるかどうかが、ここで決まるためです。

また、休職期間満了の効果を「自然退職」とするか「解雇」とするかで、後の手続と紛争リスクが大きく変わります。この点は休職期間満了・自然退職の有効要件で詳しく解説しています。

4.復職の可否をどう判断するか

当事務所へのご相談で最も多いのが、この復職判断の場面です。

判断の出発点は、従前の職務を通常程度に行える健康状態にまで回復しているかという基準です。ただし、これをそのまま適用してよいとは限りません。職種や業務内容を限定して採用した社員であればこの基準で足りますが、職種を限定していない場合には、現に配置可能な他の業務についても復職の可能性を検討する必要があると考えられています。中小企業では職種限定の合意が明確でないことが多く、ここが争点になります。

手順としては、次の流れで進めるのが基本です。

①本人から復職の申し出と主治医の診断書を提出させる

②主治医に対し、業務内容を具体的に示したうえで意見を求める

③産業医または会社指定医の意見を取得する

④必要に応じてリハビリ勤務・試し出勤を実施する

⑤以上を踏まえて会社が最終判断する

実務上の要点は②です。主治医は多くの場合、患者本人からの申告に基づいて診断しており、会社の業務内容を正確には把握していません。「復職可能」という診断書が、日常生活に支障がない程度の意味で書かれていることも珍しくありません。会社が業務内容を具体的に文書で示したうえで意見を求め直すと、診断の内容が変わることがあります。この手順を踏んでいるかどうかは、後に復職拒否の当否が争われた際の評価にも影響します。

逆に、産業医の意見も取らず、試し出勤の機会も与えずに復職を拒否した場合、その判断は不十分と評価されるおそれがあります。

5.業務起因性が争われる場合

不調の原因が業務にあると主張された場合、会社は二つの異なる手続に直面します。

ひとつは労働基準監督署による労災認定です。もうひとつは、会社に対する損害賠償請求——安全配慮義務違反(労働契約法5条)を理由とするものです。この二つは判断主体も判断基準も異なり、労災認定されたからといって直ちに会社の賠償責任が生じるわけではありません。逆に、労災不支給決定が出ても民事責任が否定されるとは限りません。

会社として重要なのは、長時間労働の把握状況、ハラスメントの申告に対する対応履歴、不調の兆候を認識した後に講じた措置——これらの記録です。これらは紛争が起きてから作れるものではありません。

詳細は精神疾患(うつ病・適応障害)の労災認定と会社の責任をご覧ください。最も重大な結果である従業員の自殺については、従業員が自殺した場合に会社の対応はどうするかで、遺族対応を含めて解説しています。

6.解決事例

メンタル不調が絡む事案の解決事例として、次の事例を公開しています。

【解決事例】セクハラを否定する問題社員が適応障害を理由に休職したケース

7.顧問契約という選択肢

ここまで述べてきたとおり、メンタル不調への対応は、問題が発生してから相談されるより、制度を整えた段階から関与しているほうが、打てる手が格段に多くなります。

就業規則の休職規定を実務に耐える内容に整備しておく、不調の兆候を把握した段階で相談できる体制を作っておく、記録の残し方を決めておく——これらは平時にしかできません。紛争が起きてから就業規則を変更しても、その社員には適用できないためです。

当事務所は使用者側の労務問題を専門に扱っており、労働者側の案件はお受けしていません。会社側の立場に立った助言に徹しています。顧問契約の内容・料金については顧問契約のご案内をご覧ください。

8.ご相談はこちらから

すでに問題が発生している場合も、これから体制を整えたい場合も、まずはお気軽にご相談ください。

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2006年、福岡県弁護士会に弁護士登録。
企業法務(使用者側での労務問題、契約書チェック、コンプライアンス体制の整備)、交通事故での損害賠償請求、相続、離婚などの家事事件、企業の事業再生・債務整理その他一般民事、刑事事件等に取り組む。
企業内の研修やセミナー開催の実績多数。
法律事務所として弁護士の質とサービスレベルの高さを磨き、地域経済、地域社会に貢献することを事務所の理念とする。

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